2020年6月1日にパワハラ防止法が施行されました。
組織の中では人間関係のイザコザがつきものです。
厚生労働省の「平成30年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、2018年度のいじめ、嫌がらせ関連の相談件数は8万2,000件以上。
今回の法施行の背景です。
この記事では
今回施行されたパワハラ防止法について
・過度な期待はしてはいけない
・パワハラに巻き込まれないための方法
について、サラリーマン歴18年の私から説明します。
私は法のプロではありませんが、会社組織に属すること18年のサラリーマン経験に基づいた内容です。
一サラリーマンが、この法の解釈について解説するものです。
現場の声なので建前と現実がよくわかる内容になっていると思います。
パワハラ防止法で何が変わる?
まず今回施行されたパワハラ防止法の概要です。
この法は厚生労働省が2020年6月1日施行するもので対象は大企業が対象です。
中小企業は2022年4月1日からになります。
大企業と中小企業の定義
大企業と中小企業の定義は以下の通りです。
業種 | 資本金の額または出資の総額 | 常時使用する労働者数 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
事業主の義務
・会社で優位な立場にある人間は労働者の就業環境を害してはいけない
・企業は労働者からの相談に応じる。
・そのための体制整備、雇用管理上必要な措置を講じる
罰則規定
罰則規定はありません!
これは結構驚きかもしれません。
罰則規定がない理由は
⇒即罰則よりも労働局からの指導で事業主が主体的に対策することが適切
という判断のようです。
ただし、指導や勧告に応じない場合は企業名の公表が行われるということです。
パワハラで企業名が公表されたら、ビジネス的には大きなダメージになります。
パワハラの定義
ここで、パワハラとは何を指すのかを整理します。
・優越的な関係を背景として言動
・業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
・労働者の就業環境が害されるもの
これらを満たすとパワハラと言われます。
※適正な範囲の業務指示や指導はあたらない
パワハラ典型的な6つの例
(引用:あかるい職場応援団サイトより)
一言で言うと理不尽な言動ですね。
「職場」とはどこまでを指すのか?
業務を遂行する場所
また、通常就業している場所以 外の場所であっても、業務を遂行する 場所については「職場」に含むことを 指針で示すことが適当とされています。
つまり、一緒にいるときはいつでも該当しますね。
休日まで一緒にいることはないと思いますが、退社後の飲み会なんかも含まれると解釈できます。
「優越的な関係」とは?
パワハラを受ける労働者が行為者に対して 抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係
わかりやすく言えば、上司が部下に対して。
ということになります。
ただ、立場上責任が伴う上司に対する部下のパワハラもあるといえますね。
「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」とは?
明らかに当該事業主の業務上必要性がない、又は その態様が相当でないもの
業務上明らかに必要性のない言動 ・ 業務の目的を大きく逸脱した言動 ・ 業務を遂行するための手段として不適当な言動 ・ 当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動(引用:厚生労働省)
「労働者の就業環境が害される」とは?
労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なも のとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること
そのことが原因で
「会社を休む、病気になる、自殺に追い込まれる」
などが考えられます。
事業主がしなければならないこと
・事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
・相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
・職場におけるパワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応
・被害を受けた労働者へのケアや再発防止
・コミュニケーションの活性化や円滑化のために研修等の必要な取組を行う
・適正な業務目標の設定等の職場環境の改善のための取組
これらは事業主の義務になりますが、パワハラ被害者にとって希望を感じる内容ではないです。
表現は悪いですが、きれいごとという感じです。
パワハラ防止法に期待してはいけない理由
実際この法が、悩んでいる方を救う可能性はかなり低いと思っています。
ですから、パワハラに悩んでいる人がこの防止法に大きな期待を寄せるべきではありません。
①形だけの対策になり得る
②相談窓口が機能しない
③被害者よりも会社を守る法改正
パワハラは見た目はわかりやすいのですが、根は深いです。
ケースが多岐にわたり、線引きすることは難しいのです。
そしてパワハラ加害者の殆どは自覚がありません。
また、場合によってはパワハラ上司が会社のパワハラ対策を行う側にいることも考えられます。
社内の就業規則等を整備して研修等を行うことは出来るが、パワハラ上司の行動を具体的に変えるようなことは企業として対策できない。できないというより、やりようがない問題である。結果的に全ての対策が形だけを整えたようなものになる。
これまでのいろんな法改正などへの対応から考えると、その可能性が高いと思います。
意識が高まるという側面はあるかもしれませんが。
これも関連しますが、相談窓口が社内にあっても相談は中々出来るものではありません。
私だったらしません。
相談窓口がパワハラ上司ということさえありえます。
・相談したところで、働く環境が良くなるどころか、いづらい環境になる可能性が高い。
・相談窓口の担当者が外部の第3者でないと相談窓口は機能しない。
これははっきりしています。
本当に私の味方になってくれるのか?
その疑念がある以上は泣き寝入りするのが現状でしょう。
今回のパワハラ防止法は、被害者よりも会社側を守る法にも見えます。
企業にとってやるべき対策することはそれほど難しくありません。
・就業規則に盛り込む
・面談等で部下の働く環境の把握につとめる
・相談窓口の設置
これをやっておけば、おそらく企業名公表まではされないと思います。
これらに対応するにはお金もかかりませんし、事務方がちょっと仕事をすればできることです。
逆にこれさえやっておけば、企業側は責任を逃れることができそうです。
わかりにくいパワハラこそが厄介
今って、実は暴力や暴言、いじめといっても、そこまであからさまなものは多くないです。
(もちろん、当たり前にある場合もありますが。)
わかりにくいパワハラ。
100人中100人がパワハラと認めるものは誰が見てもわかりますから対策もしやすい。
でも、当人だけの場合。
それは殆どの人が気づかないケースです。
だからこそ厄介です。
本来はそこの対策をすべきですが、今回の防止法では、対策になっていないのではないか?と言わざるを得ません。
わかりにくパワハラの最大の原因
わかりにくいパワハラの最大の原因は
やっている方がパワハラと気づいていない
加害者に加害の意識がなく、被害者だけが被害を感じています。
上司が集まって話合いをしても、 昭和の会社組織の常識が埋め込まれているわけなので、あまり問題意識としてとらえないのです。
そんな中で防止法や会社の就業規則に何が期待できるでしょうか。
結論:自分の身は自分で守るしかありません。
パワハラに巻き込まれない働き方とは?
全員とうまくやろうとしない
ウマが合わない人、文句を言ってくる人がいて当然です。
あ、この人とは合わないんだなとさっさと切り替えることが大事です。
サバサバしている感じの人はパワハラ被害とは遠い気がします。
組織全体にパワハラになりやすい文化がないか考える
会社全体、部署全体にパワハラが横行していないかです。
例えば、上司が企画する飲み会があり出席が当然な空気や、ミスを攻撃する、だれか犯人を仕立て上げるような風潮がある場合は要注意。
部署移動願いか、今の時代であれば転職を考えましょう。
ハッキリとものをいう(一回でいい)
パワハラの対象になるのは弱い人です。
一度でもいいので毅然と断る!
意見を言う!
これを実践してみましょう。
モノがハッキリ言える人はターゲットにはなりにくいです。
また、やり返すメンタルも大事です。見返してやるくらいの気持ちですね。
堂々とした態度を心がける
指導を受けているとき、また大勢の前で叱責されているとき等は
・上司から目を離さない
・相手との距離を一歩縮める
これは2ちゃんねるで有名なひろゆき氏が言っていました。
相手に面倒くさいやつと思わせるとターゲットは変わる
バカな上司等は動物だと思って、こいつの襲われないためにどうするかを考える
面白いですね。
これだけ見ると、バカな上司との関係で悩むなんてバカらしくなってくるはずです。
パワハラに反抗する勇気がない場合は?
上記で書いた方法は、実は多くのパワハラ被害者には難しい内容かもしれません。
そんな勇気があればパワハラには悩まないと。
その場合どうするか。
・他に信頼できる上司、同僚に相談する。(オフィシャルでない)
・転職を考える。
・労働基準監督署に相談する。
信頼出来る上司や同僚
信頼できる上司がいるといないとでは大きく違います。
何が原因なのか、公平に判断出来る人がいいです。
・自分にも何かしら問題がないのか。
・100%パワハラ上司が悪いのか。
相談の結果うまくどちらから人事異動したり離れる状況を作ってくれるかもしれません。
転職
転職については年齢、いまの生活環境にもよるかもしれません。
ただ、これからの日本は働き方改革によりジョブ型雇用が増えて行きます。
このジョブ型雇用はパワハラ等がおきにくい仕組みです。
業務、対価、役割分担が明確ですから上司も部下もありません。
面倒が人間関係等を一切排除し、仕事をする契約がジョブ型です。
今も若い企業はそういう雇用形態が多いです。
スキルに自身がある方は検討の価値ありです。
最終手段といってもいいかも知れません。
そして、会社側も一番避けたい方法と言えます。
労働基準監督署は労働者の味方です。
直接立ち入り検査(臨検)に訪れることもあります。
全ての相談に対して臨検に来るわけではありません。
でも、今回のようにパワハラ防止法が施行されたようなタイミングでは、相談に乗ってくれる可能性は高いのではないかと思います。
少し前はサービス残業等の取り締まりがすごく強かった気がします。
そういう意味では、会社側も十分配慮が必要です。
臨検は会社側は断ることができません。
また、誰が相談に来たからとかそういう部分は守られます。
どのような調査が行われるかはわかりませんが、一番効果があるのではないでしょうか。
まとめ
パワハラは撲滅しないといけない悪いことです。
ただ、今回のパワハラ防止法はパワハラ被害者を守るようで、結果的には企業が守りられる仕組みになっている気がします。
昭和の働き方が染みついた世代が退職していかないとパワハラは完全にはなくなりません。
ですから自分の身は自分で守るしかないです。
・全員とうまくやろうとしない
・会社に体育会系のようなパワハラになりやすい文化がないか考える
・ハッキリとものをいう(一回でいい)。
・堂々とした態度を心がける
・他に信頼できる上司、同僚に相談する。(オフィシャルでない)
・スキルを身につけ転職を考える。
・労働基準監督署へ相談する。
日本型の雇用形態であるメンバーシップ雇用はパワハラが起きやすい形です。
一方でこれからは欧米で主流のジョブ型雇用への動きが加速します。
これはパワハラで悩まれている方には朗報ですね。
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また相談窓口の使い方としては第3者窓口がない場合は、信頼出来る上司、または労働基準監督署を検討しましょう。
パワハラ問題でクローズアップすべきなのは、パワハラ被害を受けている人ではなくパワハラを加害している方です。
全ての行為について、いちいちパワハラに当たるかどうかは考えていられないと思います。
自分の中の常識が誰にとっても常識なのか。
また、被害を受けている人も、自分に原因はないのか。
個人個人が考える必要がありそうです。